校正のマニュアルを学習しながらの雑談。

「ハーバードを飛び級卒業なんてするわけないだろ。誰だよ、そんなデマ流した奴……」

紗世の学習ぶりを覗き込み、結城が席につく。

「えっ、違うんですか?」

「それに、4年も質の高い有意義な知識を学べる機会、みすみす縮めるなんて勿体ないことするかよ。
飛び級したのはアメリカンスクール。日本で言う中学1年から高校2年に飛び級したんだ」

「アメリカンスクール!?」

「親の仕事で、小学校の途中からずっとアメリカだったから」

「帰国子女なんですか?」

「まあな……アメリカンスクールではいい思い出なんてないけどな」

結城は寂しく悲しい顔をする。

捨てられて泣いている子猫のような。

「めちゃくちゃ苛められたんだ、体が弱いせいで……」

紙コップに注いだ青汁を飲み、ポツリ呟くように。