――うわぁーっ、超綺麗……女の子みたい

紗世は、うちの会社にこんなイケメンがいたことに、首を傾げる。

「そんなに見つめられるとさ、穴があきそうなんだけど」

気だるそうな細い声が、紗世の上に降る。

「はあ!?」

紗世は声のした方を見上げ、間の抜けた声を出す。

澄まし顔のイケメンは仄かに、爽やかな香りをさせて、壁にもたれかかるように立っている。

エレベーターに乗る順番が徐々に近づいてくる。

――これって何の香りかな。すごく心地いい

紗世は目を閉じ小さく深呼吸する。

数回、スーハーと呼吸して目を開けると、列を作って並んでいた大勢の人達が消えている。

――ゲッ!?

エレベーターの表示ライトは、階を上へ上へとスライドしていく。

「そんな~」