――マニュアルにも、「誤字脱字、疑問点、違和感は怯むことなく斬り込む」と記してあった

「先生、酒樽から出てきた凶器ですが……遺体の傷から、あの凶器は矛盾しませんか? 傷の大きさが違いますから、フェイクですよね」

西村が「良いところをついてくるな」目を輝かせる。

「紗世ちゃん、結城くんは推理力の方もなかなものでね。実に良い刺激になる」

「どうも」

「結城くんとはゆっくり夜明しをしながら語り合いたいくらいだ。どんなトリックが飛び出すか……楽しみなんだがね」

「先生、無理です。俺は体が弱いんで、徹夜はできません。早寝早起きの規則正しい生活してます」

結城はキッパリと、突き放すように言い放つ。

「紗世ちゃん、つれないだろう」

「仲良しなんですね。結城さんは、いつから先生の担当をしてるんですか?」

「1人で通い出して1年半だ」