「紗世ちゃんはかわいいな~。なあ、結城くん」

西村の目が、紗世を上から下まで舐めるように見つめ、鼻の下が伸びきっている。

にへらっと歪めた口からは、よだれが垂れてきそうだ。

結城はあまりの気持ち悪さに胃液が逆流し、吐き気を感じ、胃を擦る。

「銀縁眼鏡に黒いパンツスーツで、ハイヒールを鳴らす理系女みたいに小生意気ではなくて」

結城は誰のことを言ったかわかるだけに、素直に頷けない。

「俺はどっちかって言うと、ぶりっ子よりも知的な女性が好みです」

「ほお~」

「かわいい、綺麗だけの女性は面白味に欠けます。
恐いものをただ、恐いとしか表現できない……恐いものに作家が秘めたメッセージを受け取る感性、そういったものを、俺は麻生に磨いてほしいと思います」

結城は紗世の目から目をはなさず、毅然と言い放つ。