西村が笑うたび、三段腹が揺れる。

「西村先生、前回は村役場の課長が酒蔵を案内する所まででしたが、今回は?」

「そうだな~、酒樽から凶器のナイフが発見され、酒蔵長男の遺体が、屋敷の母屋で発見され奇妙な細工がなされている所まで、どうだい!?」

「では始めてください」

結城がノートパソコンを立ち上げる。

「結城さん、口述筆記ですか?」

「ああ、そうだ」

「結城くん、いいかね」

「いつでもどうぞ」

西村が腕組みをし、目を閉じて文章を語り始める。

紗世が予想していた以上に話す速度が速い。

ボイスレコーダーはONにしたものの、この速度でパソコンを打ちこめるのかと思う。

が、紗世の心配は無用だった。

結城は涼しい顔で、西村の語る文章を打ち込んでいく。少しも慌てることなく。