「酷い!!」

「それはこっちの台詞だ」

結城は溜め息をつき「実践でいくしかないな」と呟く。

紗世は「実践で」と聞き顔をひきつらせる。

「心配するな、エロおやじは65Aカップの幼児体型には興味がない」

「セクハラで訴えますよ」

「図星か」

「結城さん!」

紗世が頬をぷくり膨らませる。

「口述筆記をする日もある。パソコンとボイスレコーダーは必需品だ」

結城は真顔で、さらり大事なことを言う。

閑静な住宅街。

重厚な石門をパスワード入力で施錠解除し、車を数百メートル走らせる。

平屋建ての厳かな純日本家屋と和風庭園。

紗世はマニュアル「エロおやじの交わし方」冒頭の文章を、思い出す。

『皇居が見えると嘯く』と書いてあった通り、平屋建ての日本家屋から、皇居は見えるはずがない。