紗世は不安そうに立ち上がり、結城と黒田を交互に見て、給湯室に向かう。

「由樹、起こしちゃったわね」

黒田がつり上がっていた目を下げて、猫なで声を出す。

結城はゆっくりと背伸びし、紗世が給湯室に入ったのを確認し、黒田を見る。

「いえ、13時に起きる予定でしたから」

「アラームで起きないからって、揺さぶり起こすなんて」

「アハ……気を遣わせちゃいましたね」

結城は目尻に手を当て、顔を半分隠し、すまなさそうに言う。

そして……スクッと立ち上がる。

「黒田さん、俺……頼りないですけど、麻生は俺の部下なんで、俺がちゃんと育てますから。黒田さんにはそっと見守っててもらいたいんです」

「由樹……」

「黒田さんのお気持ちは凄く、嬉しいです。生意気言ってすみません。お願いします」

結城は深々と、頭を下げる。