「はあ!? 胃の中の?」

「鈍いわね、吐き気を誘うのよ」

――何、この過保護な発言は……

紗世は黒田をスルーし、「結城さん」結城の肩を揺さぶる。

「揺さぶらないでって言ってるでし!!」

「たかが揺さぶったくらいで吐き気なんて……」

「たかが揺さぶったくらいで、ですって?」

黒田が顔をひきつらせて喚く。

紗世の手首にピタリ冷たいものが、そっと触れギュッと握る。

紗世は「冷たい」と思い、手元に視線を落とす。

白く細い手が、紗世の手首をしっかり握っている。相手にするなと言うように――。

「……人が気持ちよく寝てるのに、ギャーギャーうるせぇな~」

結城は2人の声に起こされた風を装い、目を擦りながら気だるそうに言う。

「麻生、すまないがお茶淹れてきて……緑茶」

「はい」