紗世は一気に読み終えた。

――このマニュアルって全部、こんなに?

紗世はパラパラと中身を確かめる。

――うわぁ、結城さんって凄いマメだな~

紗世は自分の為にだけのマニュアルに、じわり胸が暖かくなる。

ニコニコしながら、マニュアルを鞄に仕舞い、食べたカツサンドの空箱等を片付ける。

13時。
アラームセットしたスマホが、点滅しながら機械音を鳴らす。

紗世は、もう少し感激の余韻に浸っていたかったと思う。

「結城さん……結城さん」

紗世が結城の肩を揺さぶる。

ツカツカとヒール音が近づく。

紗世がハッと音のした方へ目を向けると、黒田が手を腰に当てモデル立ちし、鋭い視線を向けている。

「麻生さん、由樹を揺さぶり起こさないで」

「えっ?」

「胃の中の内容物が上がってしまうから」