「嫌だ。お前に渡したのは間違いだった」

結城はマニュアルを胸に抱きかかえる。

「もう、声に出して読みませんから。イラスト付き、色付きで、面白かったのでつい……」

「取説みたいだと、引き出しの肥やしになるだろうからな」

――なるほど

紗世は結城なりの工夫を感じて、嬉しくなる。

結城がマニュアルを手渡し「声に出して読むなよ」と、釘を刺す。

「は~い」

「ったく、ゆっくり寝かせろよ」

紗世は再びマニュアルを読み始める。

パソコンの文字でなく、わざわざ手書きで書いたのも、結城の配慮だろうと思う。

ペン習字の手本のように丁寧な文字と、イラストには部屋の間取り図まで細かく描かれている。

大事な部分には色分けし、花丸までつけた、引き込まれるような文章の「エロおやじの交わし方」のページ。