結城の淡々とした言葉。

「そんなこと言わないでください。迷惑をかけるなんて」

「貴方は……」

言いかけた黒田の言葉を察し、結城は顔を上げる。

「俺は黒田さんに、仕事を習って良かったです。事故後の荒療治も含めて」

話しながらも、指は動かしつづける。

タイピングを始めて約30分。

結城は、一通り打ち込んだ文章を読み返し、パソコンを黒田に向ける。

「黒田さん、念のため確認を」

「……えっ、ええ」

――ウソーーっ、もう打ち込んだの~お!? あの汚文字原稿を?

紗世が心の中で呟いた……呟き。

詩乃が笑いを堪えている。

「紗世、声に出てるぞ」

「えっ!?」

黒田はパソコン画面を真剣に睨みながら、梅川の汚文字原稿が、見事な文章になっていることに驚く。

脱字も誤字もない完璧さに、舌をまく。