「あーーーっ、ダメですよ~お。西村先生は万萬くんをメチャクチャ好評価してるんですから」

「当たり前だ……『空と君』は前作『限りなく』よりバージョンUPさせているし、沢山江梨子対策も万全だ。日々の読書で作品探究はしてあるんだ……で、何か困ったことでも?」

「えっ!?」

結城は紗世を見て、口角を上げる。

「な、何でわかるんですか?」

「顔に助けてくださいって書いてあるぞ。梅川先生か?」

紗世がギクリ、顔をひきつらせる。

「さすがに察しがいいわね。その通りよ。梅川先生の汚文字が更に酷くなっていて、読めるレベルではないのよ」

「黒田さんでも無理ですか?」

「ええ、サッパリお手上げだわ」

黒田は鞄から梅川の原稿を取り出し、結城に手渡す。

結城は原稿をパラパラと捲り、フッと笑う。

「パソコンを貸してください」

「えっ……由樹」