「良いところにきたわね。由樹が退屈過ぎて退院するときかなくて困っていたところよ」

病室から、花瓶を抱えて出てきた詩乃の声は明るい。

「昨日、点滴が外れたのよ。検査の数値も落ち着いてきて、間もなく退院できそう」

「良かった」

紗世の声に反応し、中から細い声がした。

「紗世か?」

掠れた声だ。

「早く入って」

詩乃に促され、紗世と黒田は病室に入る。

心電図モニターや除細動器など、いつ発作が起きても対処できるような物々しさ。

酸素吸入のため、カニュラを鼻に挿入した結城。

顔色もまだ蒼白い。

「気分はいいんだ。貧血がひどくてな……情けないな」

結城は言いながら、黒田と紗世に座るよう促す。


「貴方の復活、みんな待ってるわよ」

「そうですよ~、西村先生や梅川先生が結城くん、結城くんって大変なんですから」

「エロおやじが」