「結城くんは、まだ復活できないのかね」

西村嘉行宅。

黒田と紗世は西村の原稿をチェックする。

西村はソワソワと落ち着かない。

「結城さんはまだ入院中です」

結城の入院から既に10日余り。

「良くないのかね?」

西村は心配顔で紗世を除きこむ。

「ん……詳しくは聞いてないです」

「結城くんが来ないと何だか物足らんのだ」

西村は言いながら、葉巻き煙草を加える。

「先生は由樹が余程お気に入りなんですね」

黒田が嬉しそうに言う。

「当たり前だ。彼ほど頭もキレて、仕事もできる若手はいないからね。何より彼は見目もいい。イメージが湧くんだよ」

「作家の先生方皆さん、そうおっしゃっていただきます」

「そうだろう、彼は他社のベテラン担当にも決して引けを取らない」