「カフェインが苦手らしい」

「だから、青汁なんですか」

「ん……どうだろう」

紗世は珈琲を乗せたお盆を手に、席に戻る。

「モタモタしてるとマニュアル読む時間なくなるぞ」

結城がうつ伏せたまま呟く。

紗世は「わかってますよ」と言いたいのを我慢して、マニュアルを読み始める。

「『エロおやじの交わし方』皇居が見えるんだよと嘯く三段腹のおやじは、毎回舐めるような視線を送る。
彼はやたらと、俺の体をなで回す――気色悪い……」

「わぁーーっあ!!」

結城はガバッと体を起こし、素早くマニュアルを閉じて取り上げる。

「バカか!? 声出して読むな」

「な、何するんですか? 読み始めたばかりなのに……」

「声に出して読めとは言ってないからっ」

「返して下さいよ~」