「はい……」

「あの時、盗聴の黒幕にまで辿り着けなかったこと、由樹はひどく気にしていたわ」

紗世の脳裡に駐車場で、屈強な男に教われた時の恐怖が甦る。

「紗世、逃げろ!!」

必死に叫んだ結城の姿が浮かぶ。

「由樹はね、あの後も後をつけられたり、脅迫文を送り付けられたりしていたそうよ」

「気づかなかった……」

「そうでしょうね。由樹は私にも話さなかったもの。相田くんや編集長が、あの後もずっと、盗聴のことを調べていて」

「わかったんですか?」

「秘書課の浅田さんと、広報部の小今田部長が関わっていたそうよ」

「小今田部長が……」

「貴女にとっては前の部長だから、由樹は隠していたんだと思うの」

「もしかして……社章にも」

「ええ、それは由樹が倒れた日にわかった情報よ」

「……!? どうして」