――結城さん

紗世には、尋常ではなかった結城の様子が納得できない。

何故、結城があれほどまでに激しく怒鳴ったのか?

――結城さんはゴースト疑惑で……あんなに怒鳴っただろうか。他に何か理由があるのかもしれない

「あの、結城さんは……結城さんが、あんなに怒鳴った理由って何ですか?」

「麻生……」

「万萬詩悠に関わるなとか、急に何故?」

紗世は渡部に詰め寄る。

渡部の困惑を察した黒田が、紗世を呼ぶ。

「麻生さん、ちょっと」

黒田は紗世を給湯室に引っ張っていく。

「麻生さん。由樹はね、万萬詩悠の正体が(おおやけ)になった時の責任が貴女に及ばないように、万萬から外したの」

「…… ……」

「由樹は自分が万萬だってこと、貴女に口止めしてたんでしょ!? 以前、盗聴騒ぎがあったわよね。覚えている?」