「結城が入院して、明日で1週間。結城は……万萬の件、今のままでは納得しないでしょうね」

「ったく、あいつの真っ直ぐさには呆れる」

廊下に慌ただしい足音が響く。

勢いよく扉が開く。

「編集長」

弾けるような笑顔の紗世が、茶封筒を手にしている。

「万萬くんの原稿を詩乃さんから、預かってきました」

「原稿?」

「結城は病院でも書いてるのか?」

「バカだろ」

「バカなんかじゃありません。結城さんは前に進もうとしているんです。結城さんはバカじゃありません」

「……不器用だな、結城は」

相田が「そうですね」というように頷く。

「結城の調子はどうなんだ?」

「ん……まだ点滴してました。詩乃さんは、しばらく養生させたいって」

「そうか……無理はさせられないからな」