「えっ!?」

「彼はあなたが編集部へ配属されて以来、何だかおかしいわ。あんなに取り乱した彼を見るのは久しぶり……あの事故以来。
由樹はね、自殺しようとしたの。事故の直後、そして……手を怪我した時も」

「どうして……」

「守れなかったって、側にいたのに守れなかったって」

「守れなかった……」

「由樹はあなたを守ろうとしているのかもしれない。麻生さん、あなた……配属前に由樹と何かあった?」

「わたしが結城さんと初めて話をしたのは、入社して間もない頃、病院のロビーだったんです」

「由樹が喋れなかった頃ね」

「はい、筆談で。結城さんだと気づいたのは最近ですけど」

「由樹は、元のようには喋れないと諦めかけてた」

黒田が紗世に微笑む。

「でも、ある時から由樹は前向きになったの。喋れるようになりたいと」