「……紗世を捲きこむ訳にはいかな……」

結城が胸をきつく押さえたかと思うと、体がガクンと脱力する。

「……由樹!! ねえ、由樹? 由樹!?」

黒田が半狂乱したように、結城を呼ぶ。

結城はピクリとも動かない。

「あ……相田くん……き、救急車、早く救急車……」

黒田が弱々しく、相田を見上げる。

「早く、由樹が……由樹が……」

相田が素早く電話をかける。

「結城さん!? しっかりしてください。結城さん! ……ゆうき……さん!?」

紗世は結城の体を揺さぶりながら、何度も呼ぶ。

「ゆうき……さん」

結城を呼ぶ紗世の声、結城を呼ぶ黒田の声が涙声に変わる。

「黒田さん。今、救急車呼んだから。詩乃さんにも」