通路にまで響く紗世の叫び声。

――あのバカっ

結城は足を止め、振り返る。

「結城さんが万萬詩悠久なんです。結城さんはゴーストなんかしていません!!」

再び紗世の叫び声が響く。

結城は身を翻し、歩を速めて引き返す。

バーンっと、編集室の扉を足で蹴り開け怒鳴る。

「お前はバカか」

「結城さん!?」

「何でお前がばらしてるんだ。口止めしただろ?……何を聞いていた……」

結城が胸を押さえ、顔をしかめる。

「結城?」

相田と渡部が声を荒らげ、結城に駆け寄る。

「……お前には関係ない!!……」

結城の声が掠れ、呼吸が乱れる。

「結城さん!?」

紗世が不安げに結城に駆け寄り、結城の肩に手をかける。

「……万萬のことは……お前に関係ない……」

結城の体がぐらりと揺れる。

「由樹!?」