「明日から万萬の担当はしなくていい」

結城は冷たく言い放ち、席を立つ。

「結城さん!? 待ってください。どういう意味ですか?」

「言葉の通りだ。万萬のことは、俺1人でやる」

小声で呟く結城の声が紗世には、何かあったとしか思えない。

「結城さん……」

紗世の呼び声に結城は顔を上げない。

黒田は机の上を片付け帰り支度を済ませた結城に、怪訝そうな視線を向け、何か言いたげにしている。

結城は「お先に」と言い、編集部を出る。

紗世が肩を落とし、席に着き、ゆっくりとパソコンを立ち上げる。

紗世は鞄から、受け取ってきた原稿や取材メモを取り出し仕訳しながら、どうして急に? と悲しくなる。

――昨日まで万萬の原稿の続きを話してくれていたのに……。
急に担当しなくていいと言われた理由も、わからないなんて