「キスコンプレックス!?」

紗世の甲高い声が編集部に響き渡る。

「結城さんは沢山先生の作品を熟読してるんですか?」

「んなわけないだろ、あんなクソ面白くない小説」

「へ!?」

「毎回ザッと一通りは読む。キャラ設定がパターン化してる。『空を詠む』の冴子、亮司のキャラ設定は『エターナルグレイス』『ローズマリーは微笑まない』のキャラ設定と酷似している。3作を比較分析してみろよ」

結城はソファーに横たえたまま、紗世の目を見て話す。

「違うのは容姿描写と僅なコンプレックスの違いだけ安っぽい恋愛小説、官能小説の方がまだマシだ」

紗世は手厳しいなと思う。

結城はゆっくり体を起こし、こめかみを親指と薬指でギュッ押す。

「まだ頭痛がする。何時?」

「12時です」

「マニュアル3ページ『エロおやじの交わし方』を読め。13時半に出掛ける。13時に起こせ」