結城が渡部に一礼し、沈みこむように、席につく。

無力だなと思う。

結城は自分自身のことなのに、何もできないことが虚しくてならない。

――何のために頑張ってきたんだ。何のために……

結城の頭に、紗世の笑顔がちらつく。

――あの時の……無邪気な笑顔。あんな風船1つ


渡部の内線電話が鳴る。

「もしもし……」

渡部は素早く電話を取った。


「相田……どうした?」

結城は聞き耳を立てる。

「……何?……そうか……――わかった……その件は濁しておけ、いいな」

――動き出している

結城はパソコンに向かい、画面を操作しながら思う。

結城には自分の非力さに、ため息しか出ない。

渡部が苦虫を噛み潰したような顔で腰を下ろす。

扉が開くと、かしましい話し声。