「そうかな。今まで築いてきた実績、信頼……」


「そんなもの別に何とも」

「そう言っていられるのは今のうちだ」

結城には小今田の言葉が、昇進を阻まれた男の遠吠えにしか思えない。

結城は浅田も絡んでいることなら、浅田の親も圧力をかけてくるのだろうと思う。

――姉「詩乃」がついた嘘。ゴーストなんて……


結城は再び、空を見上げる。


――紗世に盗聴器……灯台下暗しだ。気づかなかった……紗世には言えないな

結城は苦笑し、スマホを取り出し開いたが、直ぐに仕舞う。

――紗世は傷つけたくない。あいつの悲しむ顔は見たくない

そう思うと、結城はじっとしていられなかった。

急ぎ屋上を出る。

息を切らし、編集部のドアを開けた結城。

「結城!?」

「部長……」

「どうした?」