結城はきっぱり、言い放つ。

突き放すように。

「忘れるべきなのは、お前だろ」

「……それができるなら、そうしてる」

結城はポツリ呟き左手の甲に、視線を落とす。

「……相田さん、勘弁してください。その話は」

「わかった」

相田は溜め息混じり渋々言うと、ボールペンを手に取り、さらさらと文字を書いた。

――浅田と小今田部長が万萬のことを調べてる。何処まで掴んでいるのか、わからないが

「わかりました」

結城は素早くメモを読み、深く頷くと、タイピングした文章を確認する。

「お前、小今田部長とも何かあったの?」

「入社間もなく、西村先生の作品『獄門道』の広報ポスターにミスがあったのを指摘したことはありましたけど……」

「あ~、あれか………小今田部長、あの1件で昇進を逃した噂があるぜ」