「結城、万萬の連載始まったな」

「ええ」

「沢田先生は1話を読まれて、深刻な顔をされていた」

「そう……ですか」

結城はパソコンのキーボードを叩いていた手を休め、相田を見る。

「結城、彼女が……『空と君との間には』を読んで、『結城さんは元気?』って何度も訊ねるんだ」

「!?……」

澄まし顔で相田に相槌を打っていた結城が、顔色を変える。

「手の傷は大丈夫か? とか、浅田とはまだいがみ合っているのか?とか、体は大丈夫か? とか……」

結城は黙したままパソコン画面に、目を移す。

「『空と君との間には』の『吉行斎』は、お前ではないのかって」

「何もかも、もう大丈夫だと……『吉行斎』は俺ではない……と伝えてください」

「結城?」

「あのことは、俺の問題で……俺が原因で、彼女を巻き込んで傷つけたんだ……彼女には1日も早く忘れてほしいし、彼女は忘れるべきだ」