結城は記憶していたんだなと思うと、頬と体が火照るのを感じ、短く相槌を打つ。

「結城さん、 熱がありますよ。横になりませんか」

「……こうしてるほうが楽だから」

結城は膝を抱え起坐姿勢のまま、こたえる。

「寒くないですか」

紗世は言いながら、結城の体を肩から毛布で包む。

「……紗世『万萬』の件は内緒でな」

内緒と聞いて、紗世の胸が騒ぐ。

――結城さんと秘密を共有する

紗世に凭れかかるように身を預けた結城の体。

紗世は、しっかり支え、その手で毛布ごと細い体を抱きしめる。

――結城さん、風船の男の人は…… 一目惚れだったんですよ

紗世は心の中で呟く。

紗世の胸の鼓動が、しだいに速まり高鳴っていく。

紗世はその音が、結城に聞こえやしないかと不安になりながら。