結城がそれに、文字を書く。

さらり左手で書いた文字は、「万萬詩悠」と言う文字と「よろずしゆう」と「結城由樹」の3通り。

「万萬を万寿にしても良かっんだが……」

言いながら、「結城由樹」の下に「ゆうしろよしじゅ」と付け加える。

結城は紗世をソファーベッドに座るよう促し、腰をずらす。

紗世が腰を下ろすのを確認し、「並べかえてみろよ」とメモとボールペンを手渡す。


「えっ!?……えっと……」

紗世はメモを見つめて固まっている。

結城はソファーベッドに膝を抱えて座り、紗世を見守る。

「……結城さん」

情けない声で呼ぶ。

「できた……か?」

結城はチラと紗世と紗世の手元のメモを見て、首を傾げる。

「鈍いと思ってたけど、思う以上に鈍いんだな」

髪をかきあげ、ゆっくりと息を吐く。