紗世は呟いて目を凝らし、息を飲む。

――酸素吸入器

結城がひきつった紗世の表情に気づいて、溜め息をつく。

「……驚いたか?」

結城がソファーベッドに、体を起こし膝を抱えて座ったまま訊ねる。

「……酸素ボンベを引いて歩くほど悪くはないから」

さらりと付け加える。

「窓を開けて……カーテンも」

「いいんですか?」

「アレルギーが原因の喘息ではないから」

紗世は小さく頷きカーテンを開け、窓を開ける。


ふわり風が吹き込み、机の上に纏められたコピー用紙が数枚、ひらりと床に落ちる。

「あっ」

紗世は腰を屈め、コピー用紙を拾い上げながら印字された文字を見る。

手書きで修正を入れた、ペン習字の手本のような文字、流れるような綺麗な文章。