結城は車中、終始無言だった。

駐車場、エレベーターの中、部屋の前でも、結城はただ紗世の問いかけに、首を縦に振るだけ。

――こんなに素直な人だっただろうか

紗世は疑問よりも不安を感じながら、結城を居間のソファーに座らせる。

以前、紗世が来た時は結城の姉「詩乃」がいて寂しくは感じなかった。

誰もいない結城のマンションは、妙に寂しい。

紗世が車に置いてきた、結城の鞄を取りに向かおうとすると、結城の手が紗世の手をキュッと引く。

「結城さん!?」

「……部屋まで」

結城の消え入るような弱々しい声。

紗世は、結城を抱き支える。

オフホワイトを基調にした部屋。

ソファーベッド、机にパソコンとプリンター、本棚。

きちんと整理整頓の行き届いた部屋だ。

紗世は結城をソファーベッドに座らせて、その横をちらと見る。

「オーディオ?」