「ポプラの綿毛か。ただこうして飛ばされてる分には、綺麗なんだがな」

西村が空を見上げて言う。

「この綿毛が花粉症や喘息を引き起こすとは、思えないんだがね」

西村は言いながら、紗世に目を向ける。

目にいっぱい、涙を浮かべた紗世。

「紗世……ちゃん」

車の鍵を開け、荷物を後部座席に置く、紗世の肩が震える。

結城が紗世を見つめ、名を呼ぶ。

「……泣くなよ」

「泣いてなんかないです」

紗世の声は上擦っている。

「ポプラの綿毛の話をする前に、どうして大事なことを話さないんですか」

結城に背を向けたままの紗世。

「わたし、結城さんからボディーガードにしてやるって言われた時、すごく嬉しかったです。なのに……なのに……」

言葉につまる紗世。

「結城さんはちっとも、大事なことを話してはくれないじゃないですか」