相田の目が驚きに見開かれ、沢山が「凄いわ」と満面の笑みを浮かべている。

「書けるわ、イメージが湧いたの」

軽快に鳴るキーの音、沢山の生き生きした顔。

悲愴感を漂わせていた相田の顔が明るくなる。

相田が立ち上がり「結城、助かったよ」言いながら、軽く結城の肩に手を置いた瞬間、結城の体がグラリと揺れる。

「!……結城?」

相田が沈みこむ結城の体を支える。

「……すみません……」

「おい!! 結城!?」

全身の力が脱落し、結城が相田に凭れ掛かる。

「結城!! おい!?」

沢山は我関せず、一心不乱に、パソコンに向かっている。

「すみません……香水の匂いに……酔ったみたいだ……」

相田の肩に回した結城の腕が、ずるりと外れ結城の体が、毛足の長い絨毯の床に沈む。

「結城!!」
――結城……さん!?

駆け寄る紗世の声は喉につまり、声にならなかった。