西村が椅子を鳴らして立ち上がる。

結城の側に寄り、結城の肩をそっと叩く。

「結城くん、今日は帰って休みたまえ」

「……先生」

紗世は心配そうに、結城を見守る。

「君が倒れては、誰が紗世ちゃんに仕事を教えるんだね? 体は大事にしたまえ」

「……すみません」

結城が立ち上がろうとすると、紗世が「片付けは、わたしが全部しますから」と、結城を睨らむ。

「わたし、結城さんが喘息もあったなんて知りませんでした」

半泣きしながら、紗世は片付けを始める。

「あ……、話していないのかね」

西村が呆れ顔で、結城の顔を覗き見る。

「話すほどのことではないかと……」

「結城くん。君は、ちゃんと体のことを話しておくべきだ」

結城は西村の前で発作を起こした日から、まだ何日も経っていないなと、改めて思う。