「わかった。紗世ちゃん、いいかね!? 【酒蔵に無造作に転がった滑車には、確かにロープが絡まっていた。だが……銀田末はつとと考え、目を閉じる】……」

西村は語りながら、結城がソファーに腰掛け、肩で息つくさまに何度も視線を移す。

「紗世ちゃん。結城くんを家まで送って行きたまえ」

西村が小声で言う。

結城は前傾し膝を立て、体を丸め座っている。

紗世は結城が喘息持ちだとは、聞いたことがない。

時折、カチカチと吸入器の音がする。

「彼があそこまで、具合が悪そうにしているのを見たことがない。この所、彼はかなり無理をしているようだ。原稿は数回分、余裕があるだろう。今日は、ゆっくり休ませた方が良さそうだ」

紗世はどうしていいかわからず、結城に目を向ける。

「結城くん」