「鑑識の見解は、『打撲死させた後に腰を縛ったようだ』だった」

「ええ。殺害されたのが女性とは言え、息絶えた人間を酒樽に沈める……滑車か何か使わなきゃ無理では」

結城がつらつらと疑問をあげる。

「結城くん、ビンゴだよ」

「腰を縛り、滑車に吊るし酒樽に……ですか? となると、犯行現場は酒蔵ですよね」

結城が首を傾げる。

「何か問題があるかね?」

「ん……凶器は櫂ですか」

「変かね?」

「いえ……打撲傷の形が場所により異なる意味がわかったので」

結城が言うと、紗世が「えーっ、何で打撲傷が違うんですか!?」と素頓狂な声を上げる。

「何でだろうな、自分で考えてみろ」

結城は口角を上げる、冷たく言い放つ。

「ミステリー作家の担当をしているんだ。トリックの矛盾、落とし穴を探るのも仕事だ」