「えっ!?」

結城はいちいち、画用紙の文字を見せる。

風船を手渡されたことにも、画用紙での会話にも、紗世は驚いたような顔をしている。

『声が出なくて喋れないんだ』

結城は画用紙に文字を追加し、紗世に風船を1本渡し、別の風船を脹らまそうとするが、全く膨らまず息が乱れ咳こんだ。

「まさか、あなた風船を膨らませられないの?」


『ああ……リハビリ中』

「えっ、もしかして循環器内科の患者さん?」

『いいから、早く膨らませて』

「……ええ」

紗世は勢いよく、息を吹き込み、意図も簡単に風船を膨らませた。

「どうぞ。で、それをどうするの?」

結城は何もこたえずに、泣いている子供の頭を撫でる。

風船を子供の目の前で数回振り、注意をひく。

棒状の風船。

結城は間隔を長くしたり、短くしたりしながら、器用に捩っていく。