「結城さん! 大丈夫ですか?」


結城は喘ぐように息をつき、胸を両手できつく押さえる。


「結城さん!?」

紗世の叫び声に、黒田が血相を変え駆け寄る。


「退いて」

紗世を押し退け、結城の上着に手を入れ、小さな茶色の瓶を取り出す。

素早く蓋を開けカプセルを指に摘まみ、結城の口を抉じ開け、口に入れる。

「麻生さん、由樹の鞄から酸素ボンベを出して」

黒田は言いながら、結城のシャツのボタンを開け、パンツのベルトを緩める。

黒田の動きは、きびきびしていて手慣れている。

紗世は結城のこうした様子は、初めてではないのだろうと思う。

紗世は黒田に言われ、急いで、結城の鞄を手にし鞄の中から酸素ボンベを取り出し、黒田に手渡す。

「気が利かないわね」

黒田は素早く受け取り、酸素ボンベを結城の口に当てスプレーボタンを押し続ける。

「ボーとしていないで、背中をさすって」