「冴子の切なさ、儚さ、だけど内に秘めた妖艶さが、まるで先生のようで……」

結城は沢山江梨子のデスクに歩み寄り、連載を絶賛する。

「なあ、麻生。良いよな、『空を詠む』」

「はい、とっても」

沢山江梨子が頬杖をつき、うっとりした目を結城から離さない。

「結城くん、お掛けなさいな。ゆっくり話が聞きたいわ」

相田は沢山がそう言ったと同時に、結城が微かに笑ったような気がした。

「遠慮なく」

ゴブラン織のソファーに腰を下ろし、結城はサッと右足を下にして、足を組む。

沢山の目の輝きが増す。

「相田くん、お茶を淹れてちょうだい」

「はい、先生」

結城はソファーに腰掛け、鞄を下ろした紗世に、「相田さんを手伝って来い」と促す。

窓から射し込む光に、結城は目をすがめる。