立っているのがやっとのように見える結城。

息遣いが荒い。

結城はふらつく体を壁に預け、胸に手を押し当てる。

「辛いんですか?」

「…… ……」

結城がポツリ、口を動かすが紗世には聞き取れない。

結城の体がぐらりと揺らぐ。

咄嗟に、手すりを握りしめ持ちこたえた結城の荒い息遣いが、喘鳴に変わる。

前屈みになり、背中を丸めて尚、「大丈夫だ」と言うように、紗世の伸ばした手を振り払う。

エレベーターが止まり、ベルが鳴る。

紗世は扉が開いても、結城が気にかかり降りる気になれない。

結城は目線を上げ、紗世の手を掴む。

半分閉じかけた扉をすり抜けるように、紗世の手を引きエレベーターを降りる。

――えっ!?

つい先ほどまで喘ぐように息をつき、胸に手を当てていた結城が、紗世の前を歩いている。