「だって……結城さん、めちゃくちゃ具合悪そうじゃないですか~。心配で置いていけませんよ~」


「はあ?」


「エレベーターの中で、もし倒れたらどうするんですか?」


「っ……バカか? 心配し過ぎだ」


「でも……」

エレベーターを待つ列はない。

結城は降りてきたエレベーターの開く音を聞くや、紗世の手首を素早く握り、エレベーターに乗り込む。

後続が来るのを避けるように。


「えっ!?」

結城と紗世、エレベーターに2人きり。

結城は壁側に立ち、階のボタンを押す。

結城の辛そうな息遣い。

結城の体がぐらつき、体が沈む。

「結城さん?」

紗世は咄嗟に、結城の体を支え、その手を取り肩に回す。

「……すまない」

「あの……」

「気が緩んだだけだ」

結城は力無く言って紗世の肩から、腕を振りほどき、壁に手をつく。