「結城さん!?」

「……麻生」

「おはようございます。あの……顔色悪いですよ」

結城はエレベーター横の壁に、しなだれかかるように寄りかかっている。

「大丈夫だ……熱はない」

「いや、そうじゃなくて」

「大丈夫だから……黙ってろ」

億劫そうに紗世を見下ろす瞳には、覇気がない。

――めちゃくちゃ具合悪そう

紗世は結城の顔を覗きこみ、マジマシと見つめる。

エレベーターを待つ列を、力ない瞳で見つめている結城。

「暫くかかるな」

ボソッと呟く。

「結城さん」

「……先に行け。俺は満員のエレベーターには乗らない」

「放っておけませんよ、真っ青ですよ顔色」

結城のこめかみには、うっすらと汗が滲んでいる。

「気にするな……少し寝不足なだけだ」

結城は言いながらも胸に手を当て、呼吸を整える。