「相田さん、わたし……万萬くんの小説や原稿、それに万萬くんと結城さんを見てると……どうしても同一人物に思えるんです。万萬くんと結城さんが――」

相田はあんぐりと口を開けている。

「根拠なんて何にもないし、どうして?って聞かれても答えられないけれど……わたし、万萬くんは結城さんだと思ってしまうんです」

紗世の目にうっすらと滲む涙。

相田は紗世を見つめて唖然としている。

「今日は打合せの時、万萬くんがヴァイオリンを弾いてくれたんですけど……すごく綺麗な音で、切なくて」

「へぇ~、ヴァイオリン弾けるんだ」

「万萬くん、左手が腱鞘炎で痛むみたいで、すごく辛そうだったんですけど……」

「……結城の左手の甲、あの傷は浅田が切りつけたものだ。一時は、指が全く動かなかったんだ。結城はよく、あそこまで回復させたって思うよ」