「相田さん、香水の匂いがします」

「勘弁してくれよ。沢山先生ん家へ行くとさ、バァブリーズかけても匂いが取れないんだ」

「強烈ですよね、結城さんが倒れたのも無理ないです」

「あはは。あいつはとくに、この匂い嫌いだからな」

紗世は「この匂い」と限定したような相田の言い方に首を傾げる。

「沢山先生の香水の匂いってさ、社長秘書の浅田杏子と同じなんだ」

相田が補足した言葉に、紗世は「そうなんですか~」思い切り、口をポカンと開ける。

香水って適量つければ、さほど強烈な匂いにはならないことを実感する。

沢山江梨子のマンションは香水の匂いが、家中に充満していた。

秘書の浅田はほんのり香る程度にしか、つけていない。

なのに、沢山江梨子と同じ香水と気付く結城の敏感さ。

紗世は感嘆を通り越し、呆れるほど敏感過ぎると思う。