――相田さん、何で責めないんだよ。俺のせいで……

結城は浅田との確執を思うたび、編集部の面々が少しも自分を責めないことが、不思議でならない。

結城は思い出したくない1日を思い出し、体を丸め踞る。

あの日ーー。

浅田が編集部の新入社員を利用し、結城を書庫に呼び出した。

結城が新入社員を盾にした浅田から、新入社員を助けようとした瞬間、浅田はペティナイフを振り回し、結城の左手の甲を切りつけた。

新入社員はその一部始終を極間近で目撃し、恐怖と衝撃から鬱状態となり、会社を辞めた。

結城は彼女が未だに鬱状態で、病院通いをしていると聞いている。

彼女は相田と親しかった。

黒田の事故後、まともに話すことがままならなかった結城。

相田は戸惑う彼女のフォローをするうち、親しくなったらしい。

相田から時々、彼女の様子を聞く。

結城はそのたびに、申し訳ない気持ちになる。

彼女は未だに結城には会いたくないと言うらしい。