万萬は既に俯せたまま、こたえない。

「万萬くん……」

紗世はつついて起こそうとして手を止める。

息遣いが荒い気がして……。

――帽子を脱いだ方が楽だろうに

紗世は伸ばし止めた手を、そっと帽子に伸ばす。


紗世には、ただ楽だろうにだけでなく、気になっていることがある。

目深にかぶっている帽子の下、万萬の顔。

誰も知らない顔を見てみたい……衝動にかられる。

見えている部分は僅かだ。

が、ニキビ1つ荒れ1つない、

つるんとした卵のような綺麗で透明感のある肌だ。

頬を指先で押せばマシュマロのように、もっちりと跳ね返ってきそうな、弾力性も感じられるような。

女子中高生も顔負けの綺麗な肌。

さぞや中身の顔も「イケメン」に違いないと思うのは、必然ではないか?

紗世は自分自身を納得させる。