「真っ正面からって」

紗世は不安げに呟く。


――万萬くん、原稿書き始めてから何だか、素っ気なくて話しにくいです


紗世がそうメールを打ち、数秒後。

紗世のスマホに電話が入り、紗世は慌てて電話をとる。


――あのさ、喋れないからって、遠慮してるのを見透かされてるんだろ?


紗世は少しキレ気味の結城の声に、戸惑う。


――相手の状態だけで身構えるな。
それに、マニュアル通り実践しても万萬は心を開かないぞ


「結城さん!?」


――明日は朝から定期検診だから、お前に任せる。思うようにやっていい。
何かあったら、俺が責任はとる


「……わかりました」

紗世の頭の中。
黒田の「相手はロボットじゃない。人なのよ」と言っていた言葉と結城の言葉が重なる。


――自信を持て、万萬は自己中でも我が儘でも高飛車でもない