結城からのメール。

――お疲れ様。
リフレッシュはできたか?
すまないが明日は1日、私用で欠席する。届けは出している。
紗世、万萬との打合せは任せる。1話から5話分まで仕上がっているらしいから、宜しく


「えーーーっ!?」

万萬詩悠との打合せを任せる――という内容に、紗世は奇声を上げる。

執筆に入った万萬は、編集部での様子とは一変し、取っ付きにくい。

紗世とは必要最小限のやり取りしかしない。

耳は聞こえるのに喋れない万萬詩悠。

彼の言葉は全て筆談。
文字だけの会話。
紗世には彼の感情が読めない。


――とても美味しかったです。
ありがとうございます

万萬くんの件……自信ないです


紗世は結城の顔を思い浮かべて、メールを打つ。


――万萬には真っ正面からぶつかれ。気遣いなんていらない。
原稿が面白くないなら、面白くないと素直に言え