紗世は愛里から聞いた話と、黒田や相田そして、結城本人の話を繋ぎ合わせる。

愛里と別れ、事故後の話を聞いておけばよかったなと思い、首を振る。

――ダメダメ、結城さんから直接聞くって決めたんだから

紗世の頭の中、結城の顔や声、仕草が浮かんでは消える。

手の甲の大きな傷。

「部内の女の子を守ろうとして」愛里の話しかけた言葉が、繰り返される。

今、自分にできること――紗世は考えてみる。

――しっかり仕事を覚えること、他には……

考えても何も浮かばない虚しさに、紗世は唇を噛む。

紗世が自宅に着いて時間を見ると、１０時を過ぎている。

鞄からスマホを取り出すと、チカチカ点滅している。

店に入る前、マナーモードにしたまま、元に戻していなかったことに気づく。

着信１件。
紗世はメール画面を開く。