結城の手が震える。

「俺が……この手を掴んで引き寄せていれば」

結城の腕がきつく黒田を抱きしめる。
抱きしめられた体に伝わる結城の体温。

「俺が……発作なんか起こさずに、この手を伸ばせば間に合ったのに」

熱で火照る体が黒田を抱きしめる。

「由樹……」

「ひと言でも愚痴を言ってくれたら……ひと言でも俺を責めてくれたら」

「違う、貴方のせいじゃない」

「俺のせいでパンツしか履けなくなったって……思い切り」

結城の体が脱力し、ぐらりと揺らぐ。

黒田は倒れそうになりながら、結城の体ごと床に座り込む。

「雨の日は嫌いなんだ……あの時、踏み出せなかった1歩を思い出す……スロモーションで何度も……壊れたDVDみたいに繰り返し」

……由樹

「冷たい雨に打たれながら、あの日みたいに視界が歪んで……」